このガイドでは、サブスクリプションの管理方法や請求ソリューションの仕組み、短期間でより多くの売上を回収する方法など、継続請求の基本について説明します。
- はじめに
- 経常収益の基本
- 請求ソリューションの仕組み
- Stripe にできること
事業の成長やエンゲージメントの向上、キャッシュフローの改善、顧客獲得コストの低減、運用の合理化など、経常収益は、これらを実現するためのカギとなります。経常収益型のモデルを採用するオンライン企業は年を追うごとに増え、昨年には数万社の企業がオンラインの経常収益を管理するために Stripe を導入しました。
企業が計上支払いを管理するには、請求システムの構築または導入が必要です。請求システムは、顧客との継続的な関係を築くためのインフラストラクチャーとして機能する一方で、適切に運用されれば、ビジネスの基盤として顧客のロイヤルティの構築と収益の向上に貢献します。
自社で独自の請求システムを構築する場合は、必要以上に複雑になり、高いコストがかかります。たとえば、料金体系モデル (定額料金請求や段階的な料金体系など) に基づいて顧客に正確に請求し、顧客のライフサイクル(アップグレードや更新など)全体にわたって請求と比例配分を管理しなければなりません。また、無料トライアルや割引を通じて顧客の獲得や更新を促し、顧客が希望する支払い方法を使用できるように対応する必要もあります。
このガイドでは、継続請求の基本についてご紹介します。サブスクリプションの管理方法や請求ソリューションの仕組み、Stripe の活用方法について取り上げます。さらに、Postmates、Noom、Deliveroo、eero といった企業が継続請求を管理し、より短い期間でさらに多くの売上を回収している手法についても触れたいと思います。
経常収益の基本
経常収益の利点を活かすためには、サブスクリプションプランを作成し、顧客との関係が続く限りそのプランを管理するための手法が必要になります。具体的には、顧客に対して適切なタイミングで正しい金額を正確に請求するために、情報を収集することが求められます。
また、顧客がアップグレード、ダウングレード、一時停止、更新、キャンセルを行う際に料金体系やプランを調整するなど、サブスクリプションのライフサイクル全体に対応することも求められます。さらに、使用中の請求システムで顧客のプラン変更にいつでも対応できるようにする必要があります。月の途中で、より安価なプランに切り替えることを顧客が希望する場合、切り替え前と切り替え後の費用を日割り計算して、正確な料金を顧客に請求できるようにしなければなりません。
どの請求システムでも、顧客の初回の支払いを処理するだけでなく、顧客の支払いの詳細をセキュリティが確保された状態で安全に保管し、請求の締め日に毎回再利用することになります。顧客の支払い認証情報を再利用できるようにすることで、顧客にアクションを求めることなく、カスタムのスケジュールに沿って支払いを開始することが可能となります。カード、ウォレット、銀行引き落としはすべて再利用可能で、顧客はカード番号や銀行口座の詳細を一度入力するだけです。
継続取引のために支払いの詳細を再利用するには、事前に顧客の許可を得ることが欠かせません。継続請求システムで、(少なくとも) 次の内容を含む規約に顧客がシームレスに同意できるようにしましょう。
一連の支払いを顧客に代わって開始するための許可
支払いの頻度
支払い金額の決定方法に関する詳細
また、継続支払いを処理するために企業が登録者から初回登録時に収集すべき情報について規定した法律や規制もあります。たとえば、強力な顧客認証 (SCA) では、3D セキュアなどの 2 段階認証を使用し、ヨーロッパにおける多くのオンラインでの購入を認証することが企業に義務付けられています。
優れた請求システムは、企業の規模拡大に伴って変化するニーズを満たすのに十分な柔軟性も備えています。リカーリングビジネスでは、ますます多くのオリジナルコンテンツを制作するために、競合状況、顧客の支払意思額の変化、自社の提供製品への投資額に応じてパッケージと料金体系を定期的に変更しています。そうした変更を可能にするために、企業は登録者を旧来のプランから新しいプランに移行させることのできる請求システムに関心を持っています。
継続請求ソリューションの仕組み
継続請求システムは、顧客への定期的な請求から理想的なタイミングでの支払い遅延の再試行まで、継続請求に関するあらゆる面を自動化するのに役立ちます。
多くの企業はサブスクリプションと請求管理のソフトウェアを社内で構築しようとしますが、長期間の運用で生じる複雑性やコストを低く見積もりがちです。事業が成長するにつれ、新製品のリリース、ビジネスモデルや料金体系の試行、グローバル展開、規制要件の変更への対応など、多くの課題が生じます。自社開発のソリューションでは、このような課題に対応するために継続的な維持管理が必要です。
構築済みの請求ソリューションは、すぐに利用を開始できるだけでなく、成長の規模に応じたサポートが可能な柔軟性と機能を備えています。
いずれの請求ソリューションでも、カスタマイズ可能であることに加え、次の 6 つの基本的なタスクを処理できることが求められます。
1.注文を受ける
請求ソリューションを購入フローに組み込んで、見積もりや請求書を発行し、オンライン、対面またはモバイルデバイスで注文を受けられるようにする必要があります。新規顧客がウェブまたはモバイルでの支払いの際にサブスクリプションを申し込む場合、API を介して請求システムを接続し、自動的にサブスクリプションを生成できるようにします。ただし、サブスクリプションを手動で作成する必要がある場合は、ご使用の請求システムをダッシュボードに接続して、詳細を直接入力できるようにしてください。
さらに、自社の現在の営業活動や今後のあらゆる潜在的なビジネスモデルに対応できるようにする必要もあります。たとえば、自社の現在の営業戦略について考えてみましょう。営業チームは新規ユーザーへのアウトリーチや更新を管理していますか?それとも、セルフサービスモデルを通じて自社の製品やサービスをオンライン販売していますか?また、決まった数の標準的な製品セットを用意していますか?それとも、注文の大半はカスタマイズされているでしょうか?現在だけでなく、事業規模が拡大しても、請求ソリューションでこうした考慮事項に対応できるようにする必要があります。
2.柔軟な請求ロジックを設定する
サブスクリプションロジックは時間ベースのルールと価格ベースのルールによって成り立っており、これらの両方を使って、所定の頻度に合わせて正確に顧客へ請求を行います。自社の製品が 1 つだけで、料金体系が定額料金 (毎月 $25 のソフトウェアのサブスクリプションなど) の場合、このロジックを請求システムに設定するのは簡単です。というのも、料金が毎月同じだからです。
しかし、オンラインビジネスの大半はシンプルでも静的でもありません。請求システムは、企業が経験する不可避で、場合によっては突然生じる変化に十分対処できるように、動的である必要があります。理想的な請求ソリューションの条件として、従量課金ベースの料金体系などのさまざまな料金体系モデルを試行できる柔軟性を備えていることが挙げられます。従量課金ベースの料金体系とは、顧客のストレージ使用量 (ギガバイト単位) や毎月のアクティブユーザー数に基づいて請求が行われる料金体系のことです。また、顧客が選択する機能のパッケージによって料金を変える、段階的な価格設定も可能です。
競合他社の脅威や顧客の需要に対応するには、請求システムでプロモーション割引の試行や無料トライアルの導入を行えるようにする必要があります。また、サブスクリプションのスケジュールを設定して、初期ユーザーには特別料金を請求し、所定の回数の請求サイクルを経た後に、自動的に料金を変更するのもよいでしょう。さらに、ビジネスや経済の状況が予期せぬ変化に見舞われる可能性もあります。そのため、顧客が一時的に登録を解除する必要がある場合や、サービスを提供できない場合には、サブスクリプションを一時停止できるようにすることが重要です。
柔軟な請求ロジックを設定する
時間の経過とともに、製品やサービスに新しい階層を導入して、さらなる収益源を生み出すこともできるでしょう。オンデマンドのフードデリバリーサービスを提供する Deliveroo が、まさにその例です。同社は、Stripe を活用することによって、月次のサブスクリプション料金で配達を無料で利用できる Deliveroo Plus の提供を開始しました。Deliveroo Plus では、経常収益を増加させるだけでなく、新しいサービスを利用したユーザーのリテンション率を高めることもできました。
3.支払いを回収する
顧客は、最適で慣れ親しんだ支払い体験を求めています。支払いのプロセスが簡単であればあるほど、売上につながる可能性が高くなります。サブスクリプションベースのビジネスモデルでは、多くの場合、企業は決済時にクレジットカード情報を収集してから、バックグラウンドでカードに毎月請求します。しかし、ご使用の請求ソリューションでさまざまな支払い方法 (ACH クレジット、ACH デビット、小切手、デジタルウォレット、銀行振込など) に対応できるようにすることも必要です。
重要なのは、顧客の好みに基づいて支払い方法をカスタマイズすることです。たとえば、顧客が金額の大きな支払いを安全かつ容易に行えるように、銀行振込への対応を検討してみましょう。または、デジタルヘルスプラットフォームを提供する Noom が行ったように、グローバル展開のために現地の通貨や支払い方法を提供することもできます。ドイツにおいて、顧客がクレジットカードより口座引き落としを好んで利用していることに気付いた同社は、Stripe を活用することで、容易にこうした需要の高い支払い方法を採用し、現地のさまざまな支払い方法をテストして、より柔軟な支払い方法を世界中の顧客に提供することができました。
4.収益を増加させる
SaaS やサブスクリプションを提供する企業は、意図しない解約の問題に直面しています。これは、顧客に支払いの意思があるにも関わらず、カードの有効期限切れや、残高不足、失効したカード情報が原因で支払い処理が失敗するという問題です。実際、意図しない解約は、顧客の解約のうち、最大で 25% を占めています。
請求ソリューションでは、自動化を構築して意図しない解約の割合を低減することができます。カードの有効期限が切れたり、支払いが拒否されたりする度に自動メールを送信することが可能です。また、請求システムでは、有効期限切れのカードを更新して、失敗した取引をカスタマイズされたスケジュール (7 日ごとなど) に基づいて自動的に再試行し、支払いの成功の可能性を高めることができます。
オンラインデリバリーマーケットプレイスの Postmates では、Stripe と連携して意図しない解約を低減したことで、収益を 6300 万ドル以上増加させることができました。Stripe の自動カード更新機能 (CAU) によって、Postmates は有効期限切れの顧客のカードや再発行された顧客のカードを 200 万枚以上自動的に更新し、6000 万ドルの収益を生み出すことができました。Stripe Billing の Smart Retries でも、失敗する可能性のあった 20 万件超の支払いを回収し、300 万ドルの追加収益を生み出しました。
請求システムは、自発的な解約を最小限に抑えるうえでも役立ちます。支払い方法の変更や請求履歴の確認、サブスクリプションの終了をユーザーが希望する場合は、専用のポータルやダッシュボードを用意するとこうした操作を行いやすくなるでしょう。その専用ポータルで、キャンセル理由に基づいて代わりの選択肢を動的に提示し、リテンション率を高めることが可能です。たとえば、顧客にとって価格が高すぎる場合は、より低価格なプランにダウングレードするか、サブスクリプションを一時停止するように促します。
5.内部システムと連携する
請求ソリューションを顧客ライフサイクルの公式な記録として活用し、登録者のアクティビティに基づいて重要なビジネス上の決定を行えるようにしましょう。たとえば、新規のサブスクリプションや支払い、キャンセルが発生した際に他の内部システムへ自動的に通知を送信したり、プランの変更に基づいて請求を比例配分したり、サブスクリプションを自動または手動で更新するためのルールを設定したりできるとよいでしょう。
顧客のライフサイクル全体に対応するには、請求システムを既存の他のワークフロー (特に会計システムや、Xero、QuickBooks のような ERP システムなど) と連携させる必要があります。
Wi-Fi ハードウェアおよびソフトウェアを提供する企業の eeroでは、Stripe Billing を NetSuite と連携し、月末の決算処理に要していた時間を以前より 50% 以上短縮しました。同社は NetSuite に事前構築された Stripe の組み込みを使用し、Stripe のデータを NetSuite の元帳と自動的に同期して、容易にすばやく照合できるようにしました。
6.主要なビジネス指標をモニタリングする
請求ソフトウェアで顧客関係を管理している場合、それは顧客とビジネスに関するインサイトの重要な情報源になります。自社のレポーティングとコンプライアンスに関するニーズに応えるには、どの請求システムでもサブスクリプションのデータを完全に可視化できるようにする必要があります。請求システムには、収益に関する信頼できる単一の情報源を作成するための自動化されたレポートとダッシュボードを備えていることや、業務上の摩擦を取り除き、誰もがインサイトやトレンドを確認できるようにすることが求められます。
基本的に、請求システムのレポート機能では以下の主要な指標をモニタリングできることが要求されます。
月間経常収益 (MRR)、解約率、顧客生涯価値 (LTV) などの SaaS 向けの指標
純新規の顧客、拡張、トライアル、コホート分析などのサブスクリプションに関する分析
回収された売上などの回収と解約に関する分析
Stripe の活用方法
Stripe Billing は、サブスクリプションを管理するための特に柔軟性の高い手法です。1 回限りの支払いや継続支払いの回収をすぐに開始し、Stripe の API を使用するか、ダッシュボード内で、変更内容をテストして展開することができます。
すぐに利用可能: 数分で継続支払いの受け取りを開始することが可能です。Stripe Invoicing を使用すれば、オンラインの請求書を作成して送信できます。既存の顧客から支払いを収集したり、決済フォームへのリンクを共有したりすることで、サブスクリプションを販売できます。コーディングは不要です。Stripe が提供する事前構築済みのページを使用して、顧客がスピーディーかつ簡単にサブスクリプションと請求詳細の登録や管理を行えるようにします。
あらゆる課金モデルに対応:Stripe Billing は、ユーザー毎の料金体系から従量課金まで、あらゆるタイプの請求にそのままで対応できる柔軟な請求ロジックを備えています。さらに、クーポン、無料トライアル、比例配分 (日割り / 秒割り計算)、アドオン、超過料金への対応も組み込まれています。
解約を防ぐ機能も付いています:Stripe では、Stripe ネットワーク全体から取得した数百万のデータシグナルを使用して、支払いの成功の可能性が特に高いタイミングで、失敗した支払いを再試行します。Stripe がカードネットワークと直接やり取りし、新しいカード番号や有効期限などの支払いの詳細を更新します。平均すると、企業は Stripe Billing を使用して、失敗した請求の 41% を回収しました (2019 年)。
オペレーションの最適化:自動生成されるレポートで、成長率、解約率、リテンション率を把握できます。また、請求と支払いのデータを、その他のワークフローと簡単に同期できます。
Stripe Billing の詳細については、Stripe の ドキュメント をご覧ください。顧客への請求と決済の受け付けを今すぐ開始するには、アカウントを作成 してください。