カナダで納税義務を負う企業は、多くの場合、何段階もの税務コンプライアンスに対応しなければなりません。カナダの国内全体に適用される物品サービス税に加えて、州ごとに設けられている税規制も考慮する必要があります。事業の成長に合わせ、税務コンプライアンス上の義務に関しても、常に最新の状況に対応しておくことが重要です。第一歩として、納税義務があるすべての地域で徴収に必要な登録を適切に行いましょう。
このガイドでは、カナダで販売を行う企業向けに、税金を徴収するための登録をすべきタイミングについて解説し、税務コンプライアンス違反に伴う過料や利息を回避できるようにします。また、非居住事業者が各州で税金徴収の登録手続きを行う際にも役立つ内容となっています。さらに、税務コンプライアンスの継続的な管理の点で、Stripe が提供しているサポートについてもお知らせします。
カナダの物品サービス税 (GST) とは?
カナダの税務システムは、連邦税と州税で構成されています。物品サービス税 (GST) は国内全体に適用されます。ニューブランズウィック州、ニューファンドランド・ラブラドール州、ノバスコシア州、オンタリオ州、プリンスエドワードアイランド州の 5 州では、州売上税が GST と一体化され、統一売上税 (HST) として徴収されます。HST は、GST と同様に運用されます。これらの州で企業が徴収するのは HST だけです。
ブリティッシュコロンビア州 (BC)、マニトバ州、ケベック州、サスカチュワン州に関しては、州売上税 (PST) が別途徴収されます。ケベック州では、PST はケベック売上税 (QST) と呼ばれています。マニトバ州では、PST は小売売上税 (RST) と呼ばれます。サスカチュワン州とブリティッシュコロンビア州では、そのまま PST と呼ばれます。アルバータ州、ノースウエスト準州、ヌナブト準州、ユーコン準州の 4 州では、州売上税を設けていません。
GST 番号とは?
物品サービス税 (GST) 番号は、カナダ歳入庁 (CRA) が発行する一意の識別子で、カナダで GST を徴収・納税するために登録を行った企業を識別するものです。登録プロセスはシンプルで分かりやすく、CRA のウェブサイトからオンラインで登録することができます。
カナダでの税金徴収のための登録
登録すべき状況
原則として、カナダで物品およびサービスを提供する非居住事業者は、以下の条件を満たす場合に、物品サービス税 (GST) の登録が必要になります。
- カナダで事業活動を行うにあたり、カナダ国内で課税対象 (ゼロ税率を含む) となる供給を行っており、かつ小規模事業者でない。
- カナダで営業する娯楽施設および、開催されるセミナー、アクティビティ、イベントの課税対象となる入場券をカナダ国内で販売している (小規模事業者を含む)。
- カナダで会議を主催し、参加者の 25% 超がカナダ居住者である (小規模事業者を含む)。
小規模事業者とは、単一の四半期および直近の連続する 4 四半期において、全世界での課税対象の物品・サービス額が 3 万 CAD 以下である事業者です。
2021 年 7 月 1 日以降、デジタルエコノミー事業に対しては特別な規則が適用されています。課税対象のデジタル商品またはデジタルサービスを販売する非居住事業者や、通常の GST/HST 制度に登録されていないその他のカナダ企業は、任意の 12 カ月間の売上が 3 万 CAD を超える場合に登録が必要となります。該当する事業者は、GST/HST の簡易登録手続きを利用できます。GST/HST の簡易登録が必要な事業者が一定の条件を満たす場合は、任意で通常の GST/HST の登録に申請できます。
徴収した GST/HST の申告および納税プロセスがシンプルであるため、GST/HST の簡易登録を希望する事業者も存在します。以下は、GST/HST の簡易登録を利用するメリットです。
- GST/HST の登録を行う非居住事業者は通常、保証金を税務当局に預託するように求められますが、簡易登録では必要ありません。
- 支払い (納付) は四半期ごとに、各事業者の四半期申告期間に基づいて行われます。簡易登録を利用しない事業者の場合、申告の頻度は売上高によって異なります。
- 納付を適格な外貨で行うための認可を求めることができます。
- 仕入税額控除 (ITC) の適用が受けられないため、求められる純税額の計算と申告がシンプルです。
カナダでの税金徴収の登録方法
カナダで GST を含む税金を徴収するには、事前に該当する税務当局に登録する必要があります。GST/HST の簡易登録は、オンラインで手続きができます。連邦レベルでは納税登録のしきい値を満たしていなくても、州税を徴収するための登録が必要な場合があることにご留意ください。
カナダの課税しきい値を超え、過料や追徴課税のおそれがある場合は、税務の専門家に相談することをお勧めします。登録が済むと、税金の徴収を開始できます。登録が適正に完了するまでは、税金の徴収を開始しないでください。
ブリティッシュコロンビア州での税金徴収のための登録
登録すべき状況
BC 州では、同州の顧客向けたすべての課税対象売上および免税売上からの総売上が過去 12 カ月間に 1 万 CAD を超える、もしくは今後 12 カ月で超えると予測される場合、州内でソフトウェアと通信サービスを含む、課税対象の物品またはサービスを販売する事業者に PST の徴収を登録するように義務付けています。
連邦税の GST しきい値と各州のしきい値を考慮して、事業者は正確かつ明瞭な売上記録を残し、正しい税額を徴収する必要があります。たとえば、BC 州での売上が 1 万 CAD 超かつ (GST のしきい値である) 3 万 CAD 未満の事業者の場合、GST を徴収するための登録は必要なく、PST のみになります。ただし、今後 12 カ月以内に売上が連邦税の基準額を超えると予測される場合は、GST/HST の徴収登録が必要です。
ブリティッシュコロンビア州での税金徴収の登録方法
PST を徴収するには、事前に該当する税務当局に登録する必要があります。PST を徴収するための登録は、オンラインで行うことができます。
カナダの課税しきい値を超え、過料や追徴課税のおそれがある場合は、税務の専門家に相談することをお勧めします。登録が済むと、税金の徴収を開始できます。登録が適正に完了するまでは、税金の徴収を開始しないでください。
マニトバ州での税金徴収のための登録
登録すべき状況
マニトバ州外のカナダ企業と、同州に対する有形個人資産の提供、あるいは販売目的の勧誘、売上の受領を行う外国企業は、RST を徴収するための登録を行う必要があります。2021 年 12 月 1 日より、マニトバ州は課税権限を拡大し、州外の事業者によるデジタルサービスの販売も課税対象に含めました。オンライン宿泊プラットフォームまたはオンライン販売プラットフォームを運営する事業者や、ストリーミングサービスを提供する事業者は、RST を徴収するための登録をしなければなりません。州外の事業者にはエコノミックネクサスのしきい値が設けられていないため、該当する事業者は最初の販売の時点で登録する必要があります。
マニトバ州での税金徴収の登録方法
RST を徴収するには、事前に該当する税務当局に登録する必要があります。RST を徴収するための登録は、オンラインで行うことができます。
カナダの課税しきい値を超え、過料や追徴課税のおそれがある場合は、税務の専門家に相談することをお勧めします。登録が済むと、税金の徴収を開始できます。登録が適正に完了するまでは、税金の徴収を開始しないでください。
サスカチュワン州での税金徴収のための登録
登録すべき状況
サスカチュワン州外のカナダ企業およびカナダ以外の企業は、同州内での使用または消費を目的とした小売販売を行う場合に PST を徴収するための登録をしなければなりません。サスカチュワン州では、非居住事業者に向けたエコノミックネクサスのしきい値が設けられていないため、初回の取引から 6% の PST を徴収することになります。この指示は、デジタルオーディオやデジタル動画のダウンロード、ソフトウェア、ソフトウェアサービス、クラウドベースのサービスといった、多種多様なデジタル商品に適用されます。
サスカチュワン州での税金徴収の登録方法
PST を徴収するには、事前に該当する税務当局に登録する必要があります。このリンクから、オンラインで PST の徴収登録を行うことができます。
カナダの課税しきい値を超え、過料や追徴課税のおそれがある場合は、税務の専門家に相談することをお勧めします。登録が済むと、税金の徴収を開始できます。登録が適正に完了するまでは、税金の徴収を開始しないでください。
ケベック州での税金徴収のための登録
登録すべき状況
非居住事業者がケベック州で販売を行う場合、特別制度または一般制度のいずれかに従って登録します。以下のカテゴリーに該当する非居住事業者は、ケベック州での課税対象の売上が 12 カ月で 3 万 CAD を超える場合、特別制度を利用する必要があります。
- カナダ国外の事業者で、ケベック州内で無体動産またはサービスを販売している
- ケベック州外の事業者で、ケベック州の消費者向けに有体動産、無体動産、あるいはサービスを販売している
ケベック州での税金徴収の登録方法
QST を徴収するには、事前に該当する税務当局に登録する必要があります。QST を徴収するための登録は、オンラインから行うことができます。
カナダの課税しきい値を超え、過料や追徴課税のおそれがある場合は、税務の専門家に相談することをお勧めします。登録が済むと、税金の徴収を開始できます。登録が適正に完了するまでは、税金の徴収を開始しないでください。
Stripe にできること
上記のような複雑な仕組みになっているため、売上税の納税義務が生じる場所や登録の必要性を判断することは簡単ではありません。Stripe Tax は、納税義務の監視に利用でき、Stripe での取引で売上税のしきい値を超えた場合にはユーザーに注意を促します。
Stripe Tax は、次の局面でビジネスを支援します。
- どこで税金を登録して徴収するかを把握する: Stripe で扱った取引に基づいて、税金の徴収が必要である場所を把握します。登録後は、ほんの数秒で新しい州や国の税金徴収を開始できます。既存の Stripe の実装にコードを 1 行追加するだけです。または、ボタンをクリックするだけで、Invoicing などの Stripe のノーコードプロダクトに税金徴収を追加できます。
- 納税を登録する: 登録のしきい値を超えると、Stripe Tax は登録先のウェブサイトへのリンクを表示します。
- 税金を自動徴収する: Stripe Tax は販売商品や販売先の地域を問わず、常に正しい税額を計算して徴収します。数百種類の商品やサービスに対応しており、最新の税法や税率の改正が常に反映されます。
- 申告と納付を効率化する: Stripe は、申告場所ごとに項目別のレポートと税金サマリーを生成します。これにより、ご自身で、あるいは会計士または Stripe の申告パートナーを通じて、税金の申告と納付を簡単に行うことができます。
詳細については、ドキュメントをご覧になるか、Stripe Tax に登録してご確認ください。