オープンバンキングについて: その概要と金融サービスの変化

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  1. はじめに
  2. オープンバンキングとは?
  3. オープンバンキングの仕組み
  4. オープンバンキングサービスの例
  5. オープンバンキングの利用者
  6. オープンバンキングのメリット
  7. オープンバンキングの課題

オープンバンキングによって金融サービス業界が変化する中、企業と金融機関の関わり方を刷新するイノベーションに向けての下地が整いつつあります。よりオープンなインフラストラクチャに移行することで、モダナイゼーションとサービスの多様化を加速させる機会が生まれました。規制の動向も導入率を押し上げています。Juniper Research の 2023 年のレポートでは、オープンバンキングの決済取引額が 2027 年までに世界で 3,300 億ドルを超えると予測しています。

オープンバンキングへの移行においてデータが果たす役割は大きく、企業は詳細な財務データにアクセスすることで、リスク軽減や投資計画などの戦略的意思決定を、より多くの情報に基づいて行うことができます。しかし、重要なのはデータアクセスだけではありません。スピード、適応性、包括的なサービスも同様に重要です。金融サービス市場は、サイロ化された業務から、相互に結び付いた環境、つまり金融機関とハイテク企業が連携してより広範なサービスを提供する環境へと移行しつつあります。

ただし、オープンバンキングに課題がないわけではありません。データのプライバシー、サービス品質にばらつきがある、セキュリティが脆弱になる可能性がある、といった問題については、慎重に検討する必要があります。金融サービスの動向が進化を続ける中、企業がオープンバンキングの可能性を十分に活用するには、このような課題に先手を打って対応しなければなりません。ここでは、知っておくべきことをご紹介します。

この記事の内容

  • オープンバンキングとは?
  • オープンバンキングの仕組み
  • オープンバンキングサービスの例
  • オープンバンキングの利用者
  • オープンバンキングのメリット
  • オープンバンキングの課題

オープンバンキングとは?

オープンバンキングとは金融サービスモデルの 1 つであり、これによりサードパーティーの開発者が、アプリケーションプログラミングインターフェイス (API) を使って従来の銀行システムの金融データにアクセスできます。このモデルにより、金融データの共有とアクセスの方法が一変します。

オープンバンキングにより、消費者が自分の財務情報をさらにコントロールできるようになります。また、オープンバンキングには、サービスやアプリケーションも用意されています。非金融機関は、この移行によって、カスタマイズされた金融サービスを顧客に提供する、よりデータに基づいた意思決定を行う、決済管理やアカウント管理でイノベーションを起こす、といったことが可能になります。財務データへのアクセスが向上するため、決済プロセスを簡素化し、新たな収益源を生み出すこともできます。

オープンバンキングの仕組み

オープンバンキングでは、API を使用することで相互運用可能な金融サービスが実現し、銀行と承認済みサードパーティープロバイダーが、財務情報を安全かつ容易に交換できます。閉鎖的な環境で運営されることが多い従来の銀行サービスとは異なり、オープンバンキングによって金融サービスを分散できます。

従来型バンキングでは、データが個々の金融機関内でサイロ化されていることが多く、外部のアプリケーションと金融口座が直接やり取りするのは大変でした。オープンバンキングは、データフォーマットの標準化と安全な通信プロトコルを義務付けることで、この状況に変革をもたらします。これにより公平な競争の場が生まれ、サードパーティーサービスが、共通のルール、規制、技術標準のもとで複数の銀行と連携することができます。

オープンバンキングの API は通常、3 つのタイプに大きく分類されます。

  • データ API: 口座情報、残高、取引履歴への読み取り専用アクセスが可能です。

  • トランザクション API: 送金、口座引き落としの設定、支払いの開始が可能です。

  • 商品 API: サードパーティーが金融商品、レート、規約を一覧できます。比較サイトやマーケットプレイスでよく使用されます。

オープンバンキングによりデータの障壁が取り除かれ、プラットフォーム間の相互運用を実現できます。より詳細なデータインサイトを提供できるだけでなく、金融サービスの選択の幅も広がるため、金融サービス業界のイノベーションを加速させることができます。

オープンバンキングサービスの例

オープンバンキングは、個別の商品やサービスというよりも、サービスの枠組みです。この枠組みの中でさまざまな金融サービスを利用することができます。活発に進化している分野であることから、これからも、ますます多くの金融サービスが市場に参入してくるでしょう。ここではオープンバンキングが現在どのように利用されているかをいくつかご紹介します。

  • 支払い開始サービス
    小売業者が、従来のペイメントゲートウェイを介さずに、顧客の銀行口座から直接支払いを開始できます。この方法により売上処理を迅速化し、取引手数料を削減できる場合があります。

  • アカウントの集約
    財務の専門家や資産管理会社が複数のアカウントからデータを取り込み、クライアントの財務ステータスを包括的に把握できます。これにより、各々に合った的確なアドバイスを行うことができます。

  • 自動予算編成
    複数の銀行口座の支出が自動的に分類および追跡されるスマートな経費管理システムを従業員に提供し、財務報告と監視を簡素化します。

  • 即時融資と信用スコアリング
    金融機関がリアルタイムデータにアクセスし、信用評価をより正確に実施でき、融資承認プロセスがスピードアップします。

  • 請求書の自動照合
    オープンバンキング API を利用して、請求書と取引の照合プロセスを自動化し、管理業務を減らして精度を高めます。

  • マルチバンクプラットフォーム
    複数の市場で事業を展開する企業がさまざまな銀行の口座を 1 つのダッシュボードにまとめて、グローバルな運営を監視しやすくします。

  • マーケティングを個別にカスタマイズ
    小売業者が取引データを分析することで、個人の支出傾向に直接関連するターゲットを絞ったプロモーションを実施したり、ロイヤルティ報酬を提供したりできます。

  • リアルタイムの不正利用の検出
    取引データを瞬時に分析し、これまで以上に迅速に異常な行動を検出し、経済的損失のリスクを軽減できます。

ここで紹介する使用例は一部に過ぎませんが、オープンバンキングが金融サービス業界をどのように変えられるか、その一端を垣間見ることはできます。

オープンバンキングの利用者

オープンバンキングにより、企業や顧客が金融データにアクセスし、利用する方法が完全に作り変えられます。オープンバンキングの枠組みの中には、ほぼすべての顧客と B2B セグメントに対応する新たな金融サービスがあります。これまでにオープンバンキングから大きな影響を受けたグループをいくつかご紹介します。

  • 個人の顧客
    オープンバンキングを利用して、サードパーティーのアプリケーションから幅広い金融サービスにアクセスし、支出パターンを見直したり、各々に合った財務アドバイスを得たり、請求書の支払いなどの取引を自動化したりできます。

  • 金融機関
    従来の銀行、信用組合、その他の金融サービスプロバイダーは、オープンバンキングを利用してサービスを刷新し、顧客体験を高めます。中小のテクノロジー企業と連携して、革新的なサービスを市場に提供することもできます。

  • フィンテック企業
    テクノロジー重視の新しい企業は、オープンバンキングの安全なデータ共有機能を利用して、予算編成アプリから複雑な企業向け財務管理ソリューションまで、多岐にわたるサービスを開発します。

  • 中小企業 (SMB)
    このような組織はオープンバンキングを使用して、銀行取引と請求書の照合、財務ステータスの把握など、さまざまな業務を自動化します。

  • 規制当局
    金融ルールを策定し施行する組織にとって、オープンバンキングは、標準化された環境を構築する際に役に立ちます。オープンバンキングにより、金融サービス業界で顧客を保護し、安全なデータ取り扱い慣行を確保することができます。

  • E コマース企業
    オンラインで商品やサービスを販売する企業は、より直接的に取引を処理できます。従来の決済システムを通さないことが多く、コストを削減できます。

  • 会計プラットフォーム
    財務ソフトウェアがリアルタイムの取引データにアクセスできるため、アカウントが管理しやすくなり、手作業によるデータ入力の必要性が減ります。

  • ソフトウェア開発者
    オープンバンキング API を利用すると、ソフトウェア開発者が、個人の顧客と企業の双方に役立つさまざまなサービスやツールを作成し、イノベーションへの新たな道を切り開くことができます。

  • 信用機関と融資機関
    このような機関は、財務データにすばやくアクセスすることで意思決定を迅速かつ的確に行い、融資や信用スコアリングの手順を最適化できます。

オープンバンキングのメリット

オープンバンキングは、企業が将来に向けた位置づけを効果的に行えるように、業務を改善したり、規制に容易に対応したり、付加価値サービスを提供したりするためのさまざま機会を提供します。ここでは、企業がオープンバンキングからどのようなメリットを得られるかを説明します。

  • データに基づく意思決定
    オープンバンキングでは詳細な財務データを入手し、リスク評価から投資計画までさまざまな戦略に活用できます。従来の財務諸表よりも詳しい情報を利用することができます。

  • オペレーションの敏捷性
    オープンバンキングによりデータフローが加速し、迅速な取引や照合が実現します。このスピードが、めまぐるしく変化する市場環境に対する対応力を高めることになります。

  • 相互運用可能なコラボレーション
    オープンバンキングにより、金融機関とテクノロジー主導の企業が連携してイノベーションを起こせる環境を生み出すことができます。これにより企業顧客が広範かつ高度なサービスを提供できるようになります。

  • 決済プロセスの最適化
    オープンバンキング API を使用すると、より直接的な支払い方法が実現します。従来のゲートウェイを通さないことが多く、取引コストを削減できます。

  • 規制への対応
    オープンバンキングに組み込まれているプロトコルは標準化されていることが多く、大抵は強力なデータ保護対策が採用されています。これにより企業が規制要件を満たしやすくなります。

  • 顧客に合わせてカスタマイズ
    専門的な融資ソリューションからトレジャリーサービスまで、顧客に合わせてカスタマイズされた金融サービスを提供できます。こうしたサービスはすべて、オープンバンキングによってアクセスできる豊富なデータによって実現します。

  • リソースの配分
    財務業務が簡素化されることで、スタッフが他の業務に集中できるようになります。オープンバンキング API は、照合の自動化、請求書処理プロセスの円滑化によって、人材をさらに有効に利用できるようにします。

  • 市場への参入
    オープンバンキングでは、現地のフィンテック企業との提携が促進され、顧客データにアクセスして地域に適応しやすくなるので、企業が新規市場に参入するのに役立ちます。

  • イノベーションの触媒
    オープンバンキングは、収益化可能な新たなサービスを提供するためのダイナミックな手段を、ハイテクおよび金融分野の企業に提供することで収益源を増やし、顧客維持率を高めます。

オープンバンキングの課題

オープンバンキングには数々のメリットがあり、イノベーションの機会も数多く提供されますが、企業や金融機関が認識すべき課題もあります。ここでは、統合の問題からセキュリティの脆弱性まで、オープンバンキングの潜在的なデメリットをいくつかご紹介します。

  • 品質にばらつきがある
    優れたサードパーティーサービスがある一方で、厳しい基準を満たしていないものもあります。品質のばらつきはサービスの中断やデータの信頼性の低下につながりかねず、業務に支障が出たり、コストのかかる調整が必要になったりすることがあります。

  • 統合の問題
    複数のサードパーティーサービスや API を組み合わせると、予期せぬ技術的問題が発生することがあります。このような問題は複雑であるため、トラブルシューティングに専門的な知識だけでなく追加の時間を要することが多く、運用スケジュールに影響を与え、コストが増える可能性もあります。

  • 標準化に限りがある
    普遍的な標準が存在しないため、サービス間のやり取りが複雑になります。このように一貫性が欠如していることから、手作業でシステムの互換性と機能性を確保しなければならない場合があります。

  • 規制上の障壁
    オープンバンキングの進化に伴い、規制も進化します。このような変化に対応し続けるには、大量のリソースが必要であり、社内の専門チームや外部の専門家が法令遵守に取り組む必要があります。対応できない場合、それが罰則や法的問題につながることもあります。

  • 説明責任のギャップ
    さまざまな関係者が関与していると、エラーやセキュリティ侵害の責任所在の判断が複雑になります。この曖昧さが問題解決を遅らせ、ダウンタイムが長引いたり、顧客の問題が未解決になったりする可能性があります。

  • 隠れたコスト
    API サブスクリプション手数料以外にも、法令遵守や技術的な調整に関連して隠れたコストが発生することがあります。このような経費は時間の経過に伴って増加するため、オープンバンキングによるコスト削減効果が相殺されてしまう可能性もあります。

  • 依存リスク
    中心となる財務機能をサードパーティーサービスにアウトソーシングすると、ビジネスはある程度サードパーティーの管理下に置かれることになります。そのサードパーティーのサービス利用可能性や利用規約が変更されると、そのサービスを利用する業務では急な変更を余儀なくされ、コストと時間がかかることになりかねません。

  • 市場の不確実性
    オープンバンキングはまだ発展途上の分野であり、テクノロジーや世論の変化に左右されます。このような予測不能な要因が長期的な戦略に影響する可能性があるため、確実な計画を立てることが困難です。

  • セキュリティの脆弱性
    システムの安全性確保に最大限の努力を払っても、データ保護やセキュリティプロトコルの潜在的なギャップが悪用されることはあります。金銭的損失から風評被害まで、データやその他のセキュリティ侵害の影響は多岐にわたり、顧客からの信頼を損ない、場合によっては法的な問題につながることもあります。

オープンバンキングは顧客サービスを向上させ、新たな収益源を生み出す可能性がありますが、リスクがないわけではありません。このテクノロジーは慎重に採用するべきです。セキュリティとプライバシーを保護するために厳格な措置を講じる必要もあります。よく考えたうえで適切なリスク軽減策を講じ、かつ戦略的に参入する企業には、多くのメリットがもたらされます。

この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。

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