貴社が顧客からクレジットカードやデビットカードによる支払いを受け付けている場合、チャージバックに対する異議申し立てという概念を十分に理解しておく必要があります。チャージバックへの対応を好んで行う事業者はまずいないでしょう。チャージバックは事業者から時間と費用を奪います。支払いの差戻しによって売上が失われるだけでなく、チャージバック対策にリソースを割り当て、チャージバックを根本的に防ぐための費用も発生します。チャージバックに伴うコストは、事業者全体で毎年約 400 億ドルに上ります。これらのコストは、売上の逸失によるものだけではありません。Chargebacks.com の試算によると、事業者はチャージバックが 100 ドル発生するごとに、時間、手数料、違約金、または製品やサービスの追加損失に関して、最大 240 ドルを費やすことになる可能性があります。
世の中からチャージバックを完全になくす方法はありません。また、チャージバックは残念ながらビジネスを行ううえで避けられません。チャージバックへの異議申し立てとは何かを理解し、チャージバックに対する戦略的な対処方法を把握しておくことで、チャージバックが実際に発生したときに被る損失を大幅に減らすことができます。
この記事の内容
- チャージバックとは
- チャージバックの不正使用 (フレンドリー詐欺) とは
- チャージバックに対する異議申し立てとは
- チャージバックに対する異議申し立てに必要な反証資料
- チャージバックに対する異議申し立てによって想定される結果
- チャージバックに対応しない場合
- チャージバックに対する異議申し立てプロセスに対応するためのベストプラクティス
チャージバックとは
チャージバックとは売上の差戻しであり、顧客がデビットカードまたはクレジットカードで購入後に、その支払いについて銀行またはクレジットカード会社に不審請求の申請を行った場合に開始されます。チャージバックはあらゆる業界の消費者ビジネスにとって災難と考えられており、事業者にとっては財政上の大きな悩みの種となっています。
チャージバックはさまざまな理由で発生する可能性があります。主な理由は以下のとおりです。
- 顧客がクレジットカードやデビットカードの明細書に記載されている支払いが正当であることを認識せず、不正使用によるものだと思い込んでいる。
- 支払いが、計画的に行われた不正使用によるものである。
- 支払いを行った製品またはサービスが提供されなかった。
- 顧客が購入した製品またはサービスに問題があり、返品手続きを回避する方法としてチャージバックを請求する。
チャージバックの不正使用 (フレンドリー詐欺) とは
「チャージバックの不正使用」という用語は「フレンドリー詐欺」とも呼ばれ、矛盾している表現と思われるかもしれませんが、チャージバックの分野ではよく知られている概念です。フレンドリー詐欺とは、正当な取引に対して、顧客が返金を事業者に求めずに済ませる手段として、誤って、または故意に申請するチャージバックのことを指します。
チャージバック異議申し立てとは
チャージバック異議申し立てとは、事業者がチャージバック請求に対処することのできる過程を指します。チャージバックに対する異議申し立ての目標は、問題とされている支払いが正当なものであり、差し戻す必要がないことを証明することです。
異議申し立てに至るまでのチャージバックプロセスは、次のようになります。
- カード保有者が不審請求の申請を行う。
- カード保有者のカード発行会社が、事業者のアクワイアラーにチャージバック請求があったことを通知する。
- 事業者のアクワイアラーが事業者に通知する。
- 事業者のために、不審請求の申請に対処できる期間が設けられる。チャージバックに対処するための具体的な期間は、カードネットワークによって異なります。たとえば、Visa の場合、不審請求の申請に対応できる期間は最長 30 日間です。
- 事業者がチャージバックへの対応を希望する場合は、チャージバックの正当性を証明できる可能性のあるすべての反証資料を収集し、カードネットワークに提出する。
一般に、チャージバックに対する異議申し立ての段階で、頻繁にやり取りが行われることはありません。事業者が支払いの正当性を証明できる説得力のある証拠を提示した場合、カード保有者はそれを受け入れて、カード発行会社がチャージバックの発行を拒否するか、あるいはカード保有者がさらに異議を申し立てることができます。この段階で不審請求の申請は仲裁に移行し、そこで問題はカードネットワークにエスカレートされ、カードネットワークがカード発行会社に代わって判定を行います。仲裁プロセスが終了すると、カードネットワークによる判断が最終決定となります。
チャージバックに対する異議申し立てに必要な反証資料
チャージバックに対する異議申し立てプロセスで提出する反証資料とともに、チャージバックに対する反論の文書を提出する必要があります。この反論の手紙は、反証資料一式に沿えるカバーレターとお考えください。チャージバックに対する反論の手紙では、貴社が提出する反証資料の内容、および、その反証資料が、不審請求の申請を受けた支払いの正当性についてどのような結論を示しているのかを要約する必要があります。反証資料として提出する情報には、以下を含めることができます。
- 取引がカード保有者によって承認されたことを示す書類 (署名入りの領収書など)
- 顧客との間のすべての取引履歴
- 顧客との間のすべての通信
- 自社の返品・返金ポリシーの写し
- 自社が不正防止に関して責任ある措置を講じていたこと (カード支払いにあたって住所確認と CVV コードを求めたことなど) を証明できる取引上の書類
- 取引に関連する製品またはサービスについての説明
- 支払いが行われた製品が確実に配達された、または履行されたことを示す証拠と、それがいつどこで配達されたかを示す証拠
- 存在する場合は、関連する追跡番号または他の配送書類
- 顧客の署名入りの納品書
- デジタル製品の場合はダウンロード証明
このリストはすべてを網羅したものではありません。証拠を収集する際は、徹底的に行うことをお勧めします。ここで必要があるのは、貴社で支払いを承認したときに十分な注意を払い、さらに支払いから配達完了に至るまで、取引が正当であったことを書類で証明することです。
チャージバックに対する異議申し立てによって想定される結果
チャージバックに対する異議申し立てのプロセスは、次の 3 つのうちのいずれかの結果になる可能性があります。
カード発行会社が事業者の主張を認める判定を下す
カード発行会社が、事業者から提出された証拠を審査し、それが支払いの正当性を証明するものであると判断した場合、事業者の主張を認める判定を下し、チャージバックを無効とします。この段階で、代金は事業者に返還されます。カード発行会社がカード保有者の主張を認める判定を下す
カード発行会社が、事業者は自身の正当性を証明できていないと判断した場合、カード保有者の主張を認める判定を下し、チャージバックが認められます。カード発行会社が事業者の主張を認める判定を下し、カード保有者がそれを受け入れない
カード発行会社が、チャージバックに対する異議申し立ての段階で提示された証拠を精査して、支払いを有効とみなした場合でも、カード保有者には、支払いに対して異議を申し立てるためのもう 1 つの手段として、仲裁が認められます。
チャージバックに対応しない場合
チャージバックに対応しなかった場合、またはカードネットワークが定めた所定の期間内に対応しなかった場合は、チャージバックを受け入れたものと解釈されます。この場合、チャージバックが認められ、カード保有者が返金された売上を保持することになります。
チャージバックに異議を申し立てずに、それを受け入れることを選択した場合は、その販売による売上を失うだけでなく、送料、税金、あらに状況によってはクレジットカード会社から課される手数料など、支払いに関連するその他の手数料と費用を支払う責任を負うことにもなります。
チャージバックに対する異議申し立てプロセスに対応するためのベストプラクティス
簡潔に言うと、事業者がチャージバックに対する異議申し立ての段階で優先できる最も重要なことは、積極的に対応し、十分な反証資料を提示することです。しかし、個々の不審請求の申請において確実に主張が認められるようにする以外にも、不当なチャージバックへの対応を成功させるアプローチを生み出し、そのアプローチによってビジネスへの負担を最小限に抑え、売上の回収と知識を最大化するためにできることは多くあります。
速やかに対応する。
繰り返しとなりますが、事業者がチャージバックに対応しなければ、カード発行会社は原則として、カード保有者の主張を認める判定を下すことになり、その売上は失われます。すべてのチャージバックに対応すること、さらにその対応を可能な限り速やかに行うことが欠かせません。すぐに反証資料を収集して確認し、反証の準備を始めます。認識を深める。
チャージバックに対する異議申し立てを十分に理解することは、自社を成功へと導く最善の方法です。あらゆるものを記録に残し、重要な証拠の保管場所を把握しておく。
これがチャージバックに対する異議申し立てにおいて、自社の主張を認めてもらうための秘訣です。顧客との取引、領収書、通信の記録を整理して保管し、必要とする反証資料があれば素早く見つけられるよう、アーカイブを分類、検索する方法を必ず把握しておきましょう。請求書の表記を明確にする。
チャージバックを減らすための実践的手法に関する記事を通読することをお勧めしますが、チャージバックを回避するためにできる最も重要なことを 1 つだけ挙げるとしたら、請求書の表記を明確にすることでしょう。(この点に焦点を当てた記事も用意しております。)チャージバックの主な原因は、顧客が自身の口座の請求を認識できないことです。このため、顧客がカード明細書の確認中に貴社からの請求を見つけた際、顧客がその社名を認識し、請求元について悩む必要がないようにする必要があります。チャージバックに異議申し立て行うための拡張性のある戦略を考案する
不当なチャージバックに異議を申し立てるのは、「争いを選ぶ」行為とは程遠いですが、あらゆるチャージバックに対応する必要があります。これは、失った売上を可能な限り取り戻し、チャージバック率を適度な (低い) 水準に保つための最善策です。社内リソースを圧迫させることなく、すべてのチャージバックに異議を申し立てるには、異議申し立てプロセスの効率的な戦略を策定しましょう。講じるべき措置と、重要な反証資料の保管場所を完全に把握していれば、プロセスにうまく対応し、事業に大きな混乱を生じさせずにチャージバックを乗り切れるようになります。チャージバックに関するデータを分析する。
チャージバックの発生件数を最小限に抑えるための汎用的な戦略はいくつかありますが、最も正確なインサイトは社内データの中に存在します。チャージバックに関する情報をできるだけ多く追跡し、そのデータを定期的に確認して傾向とポイントを推測することで、チャージバックを減らすための取り組みに向けて必要な実用的知識を得ることができます。たとえば、チャージバックを発生させた主な原因は何ですか?チャージバックの大半が、本物のチャージバックの不正使用である場合、顧客が返品手続きを面倒に感じているために発生したチャージバックとは異なる手順を取ることになります。ビジネスで発生しているチャージバックの発生元や原因、頻度を把握することは、今後の発生を抑えるための正しい対策を講じるうえで重要です。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。