顧客が成功を収められるように、サービスとしてのソフトウェア (SaaS) 企業を最適化するには、意思決定を下すための判断材料にする重要業績評価指標 (KPI) をまず決定する必要があります。適切な指標をモニタリングしてビジネスの健全性を把握し、そのインサイトに基づいて効果的にアクションを取ることが重要です。
SaaS ビジネスには顧客分析の点でさまざまな優位性があります。たとえば、SaaS 企業はそれ以外の企業よりも、コンバージョン後の顧客の行動を幅広くモニタリングできます。また、コンバージョンの前後で顧客体験の可変要素を変えたり、調整したりすることも可能です。このような特徴によって SaaS 企業が収集できる顧客データの量は増えますが、最も意義のある指標を選ぶのは大変になります。
この記事では、成功を測定して将来に向けた計画を立て、必要に応じて戦略的な調整をしていくために SaaS ビジネスが追跡するべき最も価値がある 5 つの指標と、その算出方法を紹介します。
この記事の内容
- 顧客獲得に関する指標
- 顧客獲得単価 (CAC)
- 年間契約額 (ACV) と CAC の比較
- CAC の回収にかかる期間 (月)
- リードから顧客へのコンバージョン率
- マジックナンバー
- 顧客獲得単価 (CAC)
- エンゲージメントに関する指標
- 1 日のアクティブユーザー数 (DAU) と月間アクティブユーザー数 (MAU)
- 顧客エンゲージメントスコア (CES)
- 1 日のアクティブユーザー数 (DAU) と月間アクティブユーザー数 (MAU)
- 顧客維持に関する指標
- 顧客解約率
- 売上解約率
- 売上維持率 (NRR)
- ロゴ維持率
- 顧客解約率
- 成長に関する指標
- 年間経常収益 (ARR)
- 月間経常収益 (MRR)
- 顧客集中度
- 顧客月間成長率 (CMGR)
- ネットプロモータースコア (NPS)
- 年間経常収益 (ARR)
- 経済に関する指標
- 売上総利益率
- 顧客生涯価値 (LTV)
- CAC/LTV 比率
- 資金の燃焼効率
- ハイプ比率
- 売上総利益率
顧客獲得に関する指標
顧客獲得に関する指標は、SaaS ビジネスが新規顧客を獲得できる能力を測定するものです。顧客獲得に向けた会社の取り組みに関するインサイトや、収益創出と顧客基盤の拡大が可能かどうかを表すインサイトを得ることができます。こうした指標をモニタリングすると、SaaS ビジネスは改善の余地がある領域を特定して、マーケティング戦略や営業戦略を最適化し、顧客の行動を把握できるほか、データに基づいて意思決定を下して、顧客獲得率と売上を伸ばすことができます。
顧客獲得単価 (CAC)
顧客獲得単価 (CAC) は、新規顧客を獲得するための単価を測定するものです。特定の期間における新規潜在顧客への営業とマーケティングの総コストを、その期間に獲得した新規顧客の数で割って算出します。CAC を算出するには、広告、販売コミッション、その他のマーケティング費用など、新規顧客の獲得に関連するすべてのコストを考慮する必要があります。
たとえば、ある月に SaaS ビジネスが営業活動とマーケティング活動に 10 万ドルを支出し、その期間に新規顧客を 100 人獲得したとすると、CAC は 1,000 ドルになります。
年間契約額 (ACV) とCAC の比較
年間契約額 (ACV) と CAC は、それぞれビジネスの異なる側面を測定するものですが、どちらも同じくらい重要です。CAC は新規顧客の獲得にかかった単価を測定し、ACV は顧客 1 人あたりの年間平均売上を測定します。ACV は、全顧客の年間契約総額を顧客の数で割って算出します。
CAC/ACV 比率を計算すると、マーケティングリソースと営業リソースを投入するべき部分をさらに具体的に把握できます。SaaS ビジネスが収益性を高めるためには、データに基づいてマーケティング戦略と営業戦略を調整し、この比率を最適化することが大切です。
CAC の回収にかかる期間 (月)
CAC の回収にかかる期間 (月) は、新規顧客の獲得に関連するコストを回収するためにかかる期間を測定するものです。この数値は、CAC をその顧客の月間経常収益 (MRR)で割って算出します。
たとえば、ある SaaS ビジネス のCAC が 1,000 ドルで、新規顧客 1 人あたりの MRR が 100 ドルだとすると、CAC を回収するのに 10 カ月かかります。CAC の回収にかかる期間が短い場合、顧客から創出される売上ですぐに顧客の獲得単価を回収できるということになり、より効果的で収益性が高いビジネスモデルであることがわかります。
リードから顧客へのコンバージョン率
リードから顧客へのコンバージョン率 (リードから取引先へのコンバージョン率、リード成約率ともいう) は、リードから有料顧客にコンバージョンした割合を測定するものです。有料顧客の数を、獲得したリードの数で割って算出します。
リードから顧客へのコンバージョン率は、マーケティング適格リード (MQL) や営業適格リード (SQL) といった他の指標と組み合わせて使用されることが多く、リード獲得とコンバージョンのプロセスをより総合的に把握できます。たとえば、MQL/SQL 比率が高い場合は、マーケティングチームが質の高いリードを獲得していることを示している可能性がありますが、リードから顧客へのコンバージョン率が低いと、営業チームがそれらのリードを有料顧客にコンバージョンするのに苦労していることを示している可能性があります。このような問題を見つけて対処すると、営業活動とマーケティング活動を最適化して売上を伸ばすことができます。
マジックナンバー
「マジックナンバー」は顧客の顧客生涯価値 (LTV) を CAC で割って算出します。その結果得られる比率は、顧客から得られた総生涯価値でその顧客の獲得単価を回収できる回数を示しています。マジックナンバーが 1 より大きい場合は、顧客から得られた売上が、その顧客を獲得するために費やしたコストを上回っていることを表します。マジックナンバーが 1 未満の場合は、得られた売上が、顧客を獲得するために費やしたコストを下回っていることを表します。
この指標を使うと、企業が顧客をどのくらい効果的に獲得・維持して、最大限の LTV を獲得できているのか簡単に把握できます。望ましいマジックナンバーを得るためには、CAC を最適化するだけでなく、全体的な顧客体験を良好にする必要があります。そのため、マジックナンバーで、ビジネスの全体的な健全性と持続可能性を測定できます。
エンゲージメントに関する指標
エンゲージメントに関する指標では、顧客が製品とどのように関わり、どのくらいの頻度で使用しているかを示すインサイトを得ることができます。SaaS ビジネスはこの指標をモニタリングすることで、ユーザー体験と製品機能で改善の余地がある部分を特定し、顧客エンゲージメントと顧客維持率を向上させるように、情報に基づいて意思決定を下せます。
SaaS ビジネスが製品のユーザー体験をモニタリングするために定期的に追跡している主なエンゲージメント指標をいくつかご紹介します。この指標では、既存の機能の改善や、新しい方向への拡大、顧客エンゲージメントが低い分野からの撤退など、リソースを集中的に投入するべき対象も特定できます。
1 日のアクティブユーザー数 (DAU) と月間アクティブユーザー数 (MAU)
1 日のアクティブユーザー数 (DAU) と月間アクティブユーザー数 (MAU) は、SaaS 製品に対するエンゲージメントのレベルと使用状況を測定するものです。DAU は、製品をアクティブに利用している 1 日あたりのユニークユーザー数です。このユーザー数には、ログインしたユーザー、その他のアクションを実行したユーザー、売上を生み出したユーザーが含まれます。MAU は、過去 30 日間に製品をアクティブに利用した総ユーザー数を測定するものです。
DAU と MAU は似ていますが、それぞれ得られるインサイトは異なります。DAU では、製品をアクティブに利用している 1 日あたりのユニークユーザー数が取得されるので、エンゲージメントをより正確に測定できます。一方、MAU はユーザー基盤の総数を測定するのに向いており、製品の全体的なリーチとユーザー維持率を深く把握できます。
顧客エンゲージメントスコア (CES)
顧客エンゲージメントスコア (CES) は複合指標であり、製品使用状況、機能導入率、顧客満足度、顧客維持率に関連する他の顧客エンゲージメント指標の影響を受けます。
他の多くの指標は、エンゲージメントの 1 つの側面しか評価しませんが、CES は通常は別のエンゲージメント指標に重みを割り当てて、それらの指標を 1 つのスコアに統合することで算出されます。たとえば、1 日のアクティブユーザー数、月間のアクティブユーザー数、顧客維持率、ネットプロモータースコア (NPS)、顧客満足度スコアといった指標を使って CES を算出することができます。CES を使うと、SaaS の顧客エンゲージメントとビジネスの健全性に関するより微妙な状況を把握できます。
顧客維持に関する指標
顧客エンゲージメントに関する指標は、SaaS ビジネスが顧客を維持できる能力を測定するものです。顧客エンゲージメント、顧客満足度、顧客ロイヤルティ、さらに経常収益を生み出す会社の能力についてのインサイトを得ることができます。顧客獲得に関する指標は、会社が新規潜在顧客に対してどのくらい効果的にマーケティングを行っているかを示します。一方、エンゲージメントと顧客維持に関する指標は、既存のユーザーが会社に親近感を抱き、売上を生み出しているかどうかを示します。
顧客解約率
顧客解約 (顧客離反または顧客減少ともいう) は、顧客の喪失を表す言葉です。一般に、顧客解約率は特定の期間中に製品やサービスの利用をやめた顧客の割合として表現されます。たとえば、ある会社の顧客数が当初は 2,000 人で、1 カ月の間に 200 人減ったとすると、その月の顧客解約率は 10% になります。
顧客解約率が高いと、製品の料金体系やカスタマーサービスなど、顧客体験のどこかに問題があることになります。顧客解約率が高ければ、売上と成長に悪影響が及ぶ可能性があります。そのため、根本原因を特定し、製品の改善、カスタマーサポートの改善、インセンティブや割引の提供といった方法で、解約率を下げる戦略を実施することが重要です。
売上解約率
売上解約とは、顧客の売上の喪失を表す言葉です。売上解約率は一般に、顧客がサブスクリプションを解約したかプランをダウングレードしたことが原因で失われた売上の割合として表現されます。
売上解約率の計算方法は複数ありますが、特定の期間に解約した顧客が原因で失われた総売上高を、その期間の開始時点の総経常収益で割ることによって算出するのが一般的です。たとえば、ある月の初めに 10 万ドルの経常収益があり、その月末までに解約した顧客が原因で失われた売上が 1 万ドルだとすると、その月の売上解約率は 10% になります。
売上解約率を使うと、顧客解約率だけを使ったときよりもさらに正確にビジネスの財務実績と成長を把握できるため、重要な指標です。顧客解約率は失われた顧客の数を測定するものです。一方、売上解約率はその失われた顧客によってビジネスの純利益に与えられた影響を測定します。
売上維持率 (NRR)
売上維持率 (NRR) は売上継続率とも呼ばれている指標で、特定の期間に既存の顧客から継続してもたらされた売上の割合を測定するものです。NRR が高いと、会社が既存の顧客を維持できており、それらの顧客から得られる売上が持続的に増えていることを示す良い兆候です。
NRR はある期間の終了時点における既存顧客からの経常収益 (維持された売上額) を、その期間の開始時点における同じ顧客からの経常収益 (基準となる経常収益額) と比較することで算出します。簡易版の計算式は次のようになります。
(維持された売上額 / 基準となる経常利益額) x 100
たとえば、ある月の初めの時点で、既存顧客からの経常収益が 10 万ドルで、月末時点で同じ顧客から継続してもたらされた売上が 11 万 9,000 ドルだったとすると、その月の NRR は 119% になります。
ロゴ維持率
ロゴ維持率は、特定の期間に SaaS 製品またはサービスの利用を継続し、料金を支払っている会社 (「ロゴ」と呼ぶ) の割合を測定するものです。この指標は顧客維持率と似ていますが、それらの会社の個々のユーザーではなく、会社の数を測定します。ロゴ維持率を使うと、個々の顧客ではなく、主要な取引先のパフォーマンスを追跡できます。
通常は、特定の期間の終了時点で依然として有料顧客であったロゴ (会社) の数 (維持されたロゴの数) と、その期間の開始時点で有料顧客だったロゴ (会社) の数を比較することによって算出します。
ロゴ維持率の計算式:
ロゴ維持率 = (維持されたロゴの数 / 基準となるロゴの数) x 100
たとえば、ある月の初めの時点で有料顧客であったロゴ (会社) が 400 社であり、月末時点で有料顧客だったロゴ (会社) が 300 社だったとすると、その月のロゴ維持率は 75% になります。
成長に関する指標
成長に関する指標では、顧客の獲得と維持に向けた会社の取り組みに関するインサイトや、売上増とキャッシュフローの創出が可能かどうかを表すインサイトを得ることができます。マーケティング戦略と営業戦略の改善や、顧客獲得と顧客維持に対するアプローチの調整を図るために重要な指標です。
成長に関する指標として、ほとんどの SaaS ビジネスが定期的に追跡している標準的な指標をご紹介します。
年間経常収益 (ARR)
年間経常収益 (ARR) は、特定の期間 (通常は 1 年間) に SaaS ビジネスによって生み出される経常収益を予測するものです。この期間に、新たな顧客の獲得や顧客の喪失が一切ないと仮定して、既存顧客から受け取ることができると思われる資金の総額を表します。
ARR は、有料顧客の数に、顧客 1 人あたりの年間平均売上を掛けることによって算出します。この指標では、SaaS 売上の増加率と予測可能性に関するインサイトを得ることができます。予算編成、予測、資金調達の際に重要になる情報です。
多くの SaaS 企業は、ARR を利用してビジネスの成長率を測定しています。成長率は、ある期間の ARR と別の期間の ARR を比較することによって算出されます。たとえば、今年の ARR が 100 万ドルで、翌年の ARR が 120 万ドルだとすると、成長率は 20% になります。成長率が高いと、企業が新規顧客を効果的に獲得していて、既存顧客からの売上も増えていることを示すため、通常は良い傾向だと見なされます。
ARR は経常収益のみに基づいて算出されるため、1 回限りの支払いやプロフェッショナルサービスの売上は考慮されません。
月間経常収益 (MRR)
月間経常収益 (MRR) は ARR と似ていますが、年間ではなく、SaaS ビジネスによって創出された月間の経常収益を測定するものです。各月に、新たな顧客の獲得や顧客の喪失が一切ないと仮定して、既存顧客から受け取ることができると思われる資金の総額を表します。ARR と同様に、MRR でも 1 回限りの支払いやプロフェッショナルサービスの売上は考慮されません。
MRR はビジネスの成長率を測定するためにも使用します。成長率は、ある期間の MRR と別の期間の MRR を比較することによって算出されます。たとえば、今月の MRR が 10 万ドルで、翌月の MRR が 12 万ドルだとすると、成長率は 20% になります。
顧客集中度
顧客集中度は、会社の売上が少数の顧客にどの程度依存しているのかを測定する指標です。この指標を測定する方法として一般的なのは、構成比率の上位を占める顧客からもたらされた売上の割合を算出する方法です。
たとえば、SaaS ビジネスが生み出した売上が 10 万ドルで、その売上のうち上位 10% の顧客からもたらされた売上が 7 万 5,000 ドルだったとすると、顧客集中度は 75% になります。
顧客集中度が高いと、会社の売上の大部分が少数の顧客から得られたものであることを示すため、リスクがあると見なされます。そのうちのいずれかの顧客がサブスクリプションを解約したり、製品を利用するのをやめたりすれば、会社の売上に重大な影響が及ぶと予想されます。
顧客集中度では、会社の顧客基盤に関連するリスクレベルについてのインサイトが得られるため、SaaS ビジネスが追跡するべき重要な指標です。顧客集中度をモニタリングすると、改善の余地がある領域を特定し、顧客基盤の多様化、製品やカスタマーサポートの改善といった方法で、リスクを軽減する戦略を実施できます。さらに、新規顧客の獲得率も追跡して、新規顧客と既存顧客のバランスを維持することに重点を置くのも大切です。
顧客月間成長率 (CMGR)
顧客月間成長率 (CMGR) は、1 カ月間の新規顧客の増加率です。通常は割合として測定されます。特定の月に増加した新規顧客の数と、その月の開始時点の顧客数を比較することによって算出します。
CMGR の計算式:
CMGR = (新規顧客数 / 期間の開始時点での顧客数) x 100
たとえば、ある月の初めの顧客数が 100 人で、その月末までに新規顧客が 10 人増えたとすると、その月の CMGR は 10% になります。
CMGR では、顧客獲得に向けた会社の取り組みや成長の可能性に関するインサイトが得られるため、SaaS ビジネスにとって重要な指標です。CMGR が高いと、新規顧客を効果的に獲得できていて、成長の可能性が著しいことを示します。一方、CMGR が低いと、新規顧客の獲得に苦戦していて、成長の可能性に乏しいことを示します。
ネットプロモータースコア (NPS)
ネットプロモータースコア (NPS) は、会社や製品に対する顧客満足度と顧客ロイヤルティを測定するために使用します。SaaS 業界を含めさまざまな業界の企業が、顧客体験に関する指標として NPS をよく使用しています。
NPS は、顧客に「この製品またはサービスを知人や同僚にどの程度お勧めしたいと思いますか。0 ~ 10 の数字で回答してください」という質問をして算出します。それに基づいて、顧客を 3 つのカテゴリーに分類します。
- 推奨者 (9 ~ 10)
- 中立者 (7 ~ 8)
- 批判者 (0 ~ 6)
NPS は、推奨者の割合から批判者の割合を引いて算出します。
この指標では、他の業績測定基準では得られない、顧客満足度と顧客ロイヤルティに関するインサイトが定性的に得られるため、一般的に SaaS ビジネスにとって重要な指標と見なされています。NPS が高いと、顧客が製品やサービスに満足していて、他の人に勧める可能性が高いことを示し、口コミマーケティングと顧客獲得の増加につながる見込みがあります。一方、NPS が低いと、顧客が製品やサービスに満足しておらず、他の人に勧めたくないと考えていることを示し、口コミマーケティングと顧客維持率が振るわなくなるおそれがあります。
経済に関する指標
経済に関する指標は、SaaS ビジネスの財務実績を複数の切り口で測定するものです。収益性、成長、キャッシュフローや、費用を賄えるかどうかを予測するために重要な指標です。これらの指標をモニタリングすると、料金体系モデルやコスト管理、営業戦術といった財務戦略を計画的に改良できます。
売上総利益率
売上総利益率は、会社の収益性を測定するものです。売上と商品の販売原価 (COGS) の差異を、売上で割って算出します。COGS は会社の製品やサービスを生み出す際の直接費です。SaaS ビジネスの場合、COGS にはホスティング、ソフトウェア開発、カスタマーサポートに関連するコストが含まれるのが一般的です。
売上総利益率の計算式:
売上総利益率 = ((売上 - COGS) / (売上)) x 100
たとえば、売上が 10 万ドルで COGS が 5 万 ドルだったとすると、売上総利益率は 50% になります。
売上総利益率は、会社がその経費を賄えるかどうかを示します。売上総利益率が高いと、ビジネスの収益性が高く、財務状況が堅調であることを表します。一方、売上総利益率が低いと、十分な利益を生み出せておらず、経費を賄うのが困難な可能性があることを示します。
顧客生涯価値 (LTV)
顧客生涯価値 (LTV、場合によって CLV や CLTV ともいう) は、ブランドと顧客との関係が結ばれている期間にわたって、その顧客が会社にもたらすと予想される総額を測定するものです。顧客の長期的な価値に関するインサイトを得ることができ、最も収益性の高い顧客セグメントを特定するのに役立つため、SaaS ビジネスにとって重要な指標です。
一般的に、LTV は顧客あたりに獲得できる価値に、その顧客が存続する期間の長さを掛けて算出します。顧客存続期間を月単位で測定するほうが理にかなっている業界もあれば、年単位で測定するほうが適している業界もあります。たとえば、自動車メーカーには 1 年で車を何台も買い替える顧客はほとんどおらず、顧客維持に向けた取り組みは複数年にわたる期間でリピート購入を増やすことに重点を置くのが普通であるため、LTV を年単位で測定するとよいでしょう。
LTV はさまざまな方法で算出できます。そのうち、簡易的な方法をご紹介します。
LTV = (取引の平均額) x (取引の平均数) x (顧客存続期間)
一般的に、LTV は、顧客 1 人あたりの年間平均売上 (ARPU) に月単位での平均顧客存続時間 (CLV) を掛けて算出します。
LTV = ARPU x CLV
たとえば、取引の平均額 (1 カ月あたりでの取引 1 件の平均額) が 100 ドルで、平均顧客存続期間が 24 カ月だとすると、LTV は 2,400 ドルになります。
LTV は推測と過去データに基づく予測指標です。LTV の精度と有効性を最大限に高めるために、指標を定期的に計算し直して、顧客の実際の生涯価値と比較してください。
LTV をモニタリングすると、最も高い価値をもたらす顧客セグメントを特定して、それらのセグメントをターゲットにするようにマーケティング戦略と営業戦略を最適化できます。さらに、LTV は CAC を算出するためにも使用でき、支出が顧客の推定生涯価値を上回っているのか下回っているのかを判断できます。そうすると、改善の余地がある領域を特定して、顧客獲得戦略を最適化するのに役立ちます。
CAC/LTV 比率
CAC/LTV 比率 (顧客獲得単価と顧客生涯価値の比率) は、新規顧客の獲得単価と、その顧客が存続期間中にもたらすと予測される総売上の比率です。単体の CAC や LTV と同様に、この比率を参考にすると、最も収益性の高い顧客セグメントを特定し、マーケティングリソースと営業リソースの割り当て、製品開発、顧客獲得戦略に関する意思決定を情報に基づいて下せるため、SaaS ビジネスにとって重要な指標です。
CAC/LTV 比率の計算式:
CAC/LTV 比率 = CAC / LTV
たとえば、CAC が 500 ドルで LTV が 2,400 ドルの場合、CAC/LTV 比率は 0.21 (21%) になります。
CAC/LTV 比率が 1 未満の場合、会社が顧客から獲得する売上が、その顧客を獲得するために費やす金額を上回っていることを示すため、理想的と考えられます。比率が 1 より大きい場合は、会社が顧客を獲得するために費やす金額が、その顧客から得られる売上よりも多いことを示します。
資金の燃焼効率
資金の燃焼効率は、会社の資金燃焼率 (会社が現金を消費するスピード) と現在の現金残高の関係を測定するものです。一般的に、この指標は SaaS ビジネスなどのスタートアップやアーリーステージの企業が自社の財務の健全性を評価して、追加の資金調達が必要になるまでの残り期間 (ランウェイ) を判断するために使用します。
資金の燃焼効率の計算式:
資金の燃焼効率 = 現金残高 / 資金燃焼率
たとえば、現金残高が 10 万ドルで、資金燃焼率が 1 カ月あたり 5 万 ドルだとすると、資金の燃焼効率は 2 になります。これは、会社が追加の資金調達が必要になるまでに、経営を 2 カ月間維持できるだけの十分な現金があることを示します。
資金の燃焼効率が高いと、ランウェイが長く、良好な財務状況であると見なされるため、望ましい状態です。
ハイプ比率
ハイプ比率は、会社に対する世間の関心の高まり (「ハイプ」) と会社の財務実績との関係を測定するために使用される指標です。この指標は、SaaS 企業をはじめとするスタートアップを評価する際によく使用されており、会社に対する期待が実態に見合っているかどうかを示すインサイトを得ることができます。
「ハイプ」とは測定するのが難しい主観的な概念ですが、ハイプ比率を算出するための計算式として次の式が広く受け入れられています。
ハイプ比率 = (メディアでの報道数 + ソーシャルメディアでの言及数 + 検索ボリューム) / 売上
この指標の分子は会社に対する関心度を測定するもので、分母は会社の財務実績を測定するものです。
ハイプ比率が高いと、会社に対する期待が高すぎ、興味や関心を売上につなげるのが難しい時期があることを示すサインです。ハイプ比率が低いと、会社に対する期待が低すぎ、本来得られるべき評価を受けられていない可能性があることを示します。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。