効率的かつ収益性の高い方法で、SaaS (サービスとしてのソフトウェア) ビジネスの規模を拡大することは、営業チームやエンジニアリングチームのメンバー数を単に増やすことではありません。そうした戦術が成長に役立つ場合もありますが、綿密に練られた成長計画がなければ無益です。嬉しいことに、SaaS ビジネスには需要があり、非常に拡張性が高くなる可能性があります。この業界は急成長を遂げており、世界の SaaS 市場規模は現在約 3 兆ドルで、2030 年までには 10 兆ドルに急増する見込みです。SaaS 企業の発展に伴い、高機能の SaaS マーケットプレイスとプラットフォームの需要も高まっています。
こうしたインサイトを活用すれば、リソースを戦略的に割り当ててビジネスの規模を拡大し、現在の顧客の満足度を維持して顧客離れを最小限に抑えながら、新たな顧客を獲得することができます。適切な投資と忍耐により、市場の変動を乗り越えて成長し続ける SaaS ビジネスまたはプラットフォームを構築できます。
この記事の内容
- ビジネスモデルと階層型料金体系を改良して最適化する
- シームレスなアカウント登録体験を実現する
- 分析を利用して顧客定着率を向上させる
- 動的な請求および督促戦略を導入する
- コンテンツマーケティングの力を過小評価しない
- 継続的な露出を行うリターゲティング戦略を構築する
- 可能な限り自動化する
__ビジネスモデルと階層型料金体系を改良して最適化する
コアビジネスの定義で中心的な役割を果たす SaaS セールスモデルを最初に時間を取って理解することにより、よくありがちな誤りを避けることができます。さまざまな考え方がありますが、主な SaaS セールスモデルは、ロータッチとハイタッチの 2 つです。ビジネスが依存しているモデルを理解することで、追跡すべき消費者分析情報や新規顧客の獲得方法など、多くのことを決定できます。
ロータッチセールスモデルでは、セールスは最小限の対面取引の形で行われるため、顧客にリーチするためのマーケティングが重視されます。「フリーミアム」とも呼ばれる無料トライアルの提供は、ロータッチセールスモデルの中心的なサービスです。この方法では、製品自体に語らせ、ユーザー自身に製品の機能を試してもらうことができます。ロータッチ SaaS 製品の料金は、基本の無料版から始まり、プレミアムなエンタープライズ版へと上がっていく、階層型の体系であることが一般的です。
対照的に、ハイタッチ SaaS モデルは、より従来型のセールスモデルで、営業チームのメンバーがリードの生成、顧客訪問のスケジューリング、潜在顧客向けの製品デモンストレーションの予約、契約の締結を行います。ハイタッチセールスでは、より積極的なアプローチで顧客の登録やテクニカルサポートに取り組む必要があり、これが顧客離れを最小限に抑える鍵になります。このモデルでは、営業チームに、数百人の潜在ユーザーを抱える大企業のような顧客の特定のニーズに合わせて料金パッケージを設定する自由裁量権がはるかに多く与えられます。
料金は、SaaS ビジネスの規模を拡大するための最も重要なタッチポイントの 1 つであり、特にオンデマンドのカスタマーサービスのようなプレミアムサービスについては、計画していたよりも大胆に製品の料金設定を行うというのが重要な指針となります。とはいえ、料金体系のテストや新しい請求モデルの構築は、エンジニアリングチームにとって大きな負担になる場合があります。幸いなことに、Stripe では、エンジニアリングの負担を増やしたり複雑な請求ロジックを追加したりすることなく、料金体系を簡単に試すことができます。
シームレスなアカウント登録体験を実現する
新規ユーザーの獲得後や課金ユーザーのプレミアム製品への移行後に、そのユーザーを保持するためにまず求められるのは、シームレスでストレスのない登録プロセスです。製品の使い方を理解しようとしているときに、ユーザーインターフェースの操作、インストールのトラブルシューティング、ヘルプへのアクセスがうまくいかないと、否定的な口コミだけでなく、ただちに解約されるリスクがあります。
登録体験をコンバージョン前のマーケティング戦略の延長とみなし、同じように細心の注意を払って構成するのが有益です。マーケティングファネル戦略の目標は、製品に明らかな価値を感じて、顧客になることを真剣に検討するようになった瞬間から、コンバージョンして顧客になることを決断する瞬間まで、顧客を導くことです。さらに、その間、顧客がストレスを感じないようにすることがこの目標には含まれています。コンバージョン後の登録にも同じことが当てはまります。これを適切に行うことは、顧客満足度や顧客定着率にとって同じほど重要です。
詳細な顧客ペルソナを作成することは、主要な顧客セグメントに訴える具体的なユースケースと価値提案に焦点を当てた特別仕様の顧客ジャーニーを構築するための優れた方法です。そのようなペルソナ開発の第一歩として、製品を既に愛用しているユーザーの行動を顧客担当チームで研究し、そうしたユーザーに共通する主要なベンチマークをリバースエンジニアリングすることができます。
SaaS のトップ企業は、登録プロセスは迅速で簡単なものに、特に初回ログインはそうでなければならないことを理解しています。次のステップへの行動を促すメールや、カスタマイズされたウェルカム ビデオで新しい顧客を歓迎し、製品をすぐに使用できる方法を明確に説明します。メール、ショートメッセージ、プッシュ通知など、複数のチャネルで顧客に情報を伝えることで、ユーザーへの配慮とサポートを印象づけながら、ユーザーが問題に遭遇するのを回避することができます。さらに、クライアントにとってのメリットを見つけ、早い段階で定期的に確認して、クライアントが満足するためのベンチマークに到達できるようにサポートする必要があります。
アカウント登録は、エンドユーザー向けの SaaS ビジネスだけの問題ではありません。Stripe Connect Onboarding を使用すると、SaaS プラットフォームとマーケットプレイスで、コンバージョンのために最適化された構築済み UI を使用して、新規アカウントをシームレスに登録できます。本人確認が簡単にできるこの UI を使用すれば、さらなる迅速化が可能になります。すぐに使用できる Stripe のソリューションには、エラー処理、フォーマッティング、入力検証、利用者登録の合理化が組み込まれているので、企業の限られたエンジニアリングリソースを割く必要がありません。
分析を利用して顧客定着率を向上させる
顧客定着率は、SaaS ビジネスの規模を拡大するときの鍵であり、パフォーマンスを追跡し、その結果に基づいて行動計画を立てるという作業を絶えず続けることが求められます。製品に求めるものは何か実際の顧客に尋ねるなどの方法で顧客からフィードバックを集め、顧客ニーズへの対応の向上と将来の製品設計に役立つ貴重なインサイトを得ることができます。SaaS 製品の各レベルに追跡指標を組み込むことで、個々の機能の価値を調査することができます。
ロータッチ SaaS モデルの場合、無料トライアルの登録にクレジットカードが必要かどうかによって、重要なコンバージョン率のベンチマークが大きく左右されます。無料トライアルにクレジットカードが不要な場合に、コンバージョン率が 1% 未満であると、製品の市場適合性が低い証拠とみなされ、2% 以上であると、非常に成功しているとみなされます。登録にクレジットカードが必要で、トライアル期間内にキャンセルしないとユーザーが課金される場合に、コンバージョン率が 40% を大幅に下回ると、製品の市場適合性が低いことを示し、40% 台は良好、コンバージョン率が 60% であれば、トライアル期間中に顧客獲得に成功している強力な証拠になります。
動的な請求および督促戦略を導入する
コンバージョン率と顧客定着率について考えるときには、顧客体験以外にも検討すべき要素があります。特にビジネスの規模を拡大するときには、どのようなアプローチで請求と督促を行うかによって、顧客を維持できるかどうかが大きく左右されます。通常、ハイタッチ SaaS モデルのベンチマークの方が年間解約率に左右され、創業初期の企業では 10% が一般的です。7% を維持できれば非常によいとみなされます。純収入ベースの負の解約率、契約を増やしたクライアントの価値、その他の同様の前年比成長率を追跡することも、ハイタッチ SaaS の追跡に欠かせない指標です。
Stripe Billing を使用すると、ユーザーはサブスクリプションを簡単に管理できます。サブスクリプションの課金が失敗した場合でも、Stripe の Smart Retries では、機械学習を使用して、初回の試行で失敗した課金の平均 38% を回収できます。Stripe の Smart Retries では、以下のような時間に依存する何百という動的な信号を使用します。
- 過去「N」時間に特定の決済手段を提示した、異なるデバイスの数
- 支払いに最適な時間 (特定の国でデビットカードで行われる支払いは、ローカルタイムゾーンの午前 12:01 に成功する可能性が若干高くなります)
固定のルールに依存するソリューションとは対照的に、顧客の行動から学習して継続的に進化する戦略を選択している Stripe Billing のようなソリューションを使用することは、この分野の企業の取り組みを最大化する効果的な方法です。
最後に、顧客が製品を使用しなくなった場合には、時間をかけて入念な店頭出口アンケートを行い、否定的なフィードバックに迅速に対処することで、無視できない顧客の問題へのインサイトを得て、将来の問題を事前に解決することができます。
コンテンツマーケティングの力を過小評価しない
SaaS 企業にとって、コンテンツへの投資は必ずしも最善の戦略ではありません。とはいえ、業界が成長するにつれ、コンテンツは、企業が対象ユーザーに対して、ユーザーのニーズや懸念、ソフトウェアやプラットフォームで解決しようとしている課題を理解していることを表す強力な手段となります。これは、より広範なマーケティング活動の目標ですが、コンテンツマーケティング (ブログ投稿、ランディングページ、ホワイトペーパー、ビデオ、ポッドキャストなど) は、対象ユーザーにさらに多くの情報を伝える長期的な手段となります。また、コンテンツは非常に多くの役割を果たすことができます。理想的なブランド表現を強化したり、製品のユースケースを紹介したり、顧客の幅広いニーズや関心に自社のビジネスが対応していることを強調したりできます。
ソフトウェア企業とそれらの企業をサポートするプラットフォームにとって、定義された任務を果たすように特別に設計されたコンテンツのライブラリを構築し、戦略的に展開することは、強力な ROI の創出につながります。ブランドを表現し、権威あるリソースをユーザーに提供するコンテンツを公開することで、コミュニティのソートリーダーとしての地位を確保できるようになり、また、自分の SaaS 企業が、リソースやサポートを探している顧客 (または潜在顧客) の第一想起となることで、新規リードの獲得と顧客定着率の向上につながります。
コンテンツ計画を策定するときには、「対象ユーザーは誰か」と「対象ユーザーのためにどんな問題を解決するか」という質問について考えてください。まずは対象ユーザーを理解して、彼らの質問を予測することにより、ニーズに応え、信頼を築き、ブランド認知度を高めるコンテンツを開発ます。そうしながら、ユーザーが最も必要しているときに彼らが求めている答えを提供することができます。
継続的な露出を行うリターゲティング戦略を構築する
ウェブサイトを初めて訪れた閲覧者をすぐに課金ユーザーにコンバージョンできることはあまりありません。そのため、リターゲティング戦略でウェブサイトへの再アクセスを促すことにより、コンバージョンの成功率を高めることができます。リターゲティングとは、インターネットを閲覧中の潜在顧客に自社製品を再表示することで、自社の SaaS ビジネスを潜在顧客に露出し続けるマーケティング戦略です。自社のビジネスを第一想起にし、過去の訪問者にウェブサイトを再訪問して購入を行うように促すことが目的です。
最も一般的なリターゲティング戦略の中に、Google Display Network (GDN) や Facebook を利用して広告を購入し、リードを育成するという戦略があります。統計によれば、GDN は世界のインターネットユーザーの 90% にリーチでき、そのうちの 65% が日常的に利用しています。Facebook の広告視聴者数の合計は 20 億人以上に達するとしています。これは、月間アクティブユーザー 29 億 1000 万人の 72.5% に相当します。
また、トライアル終了時にコンバージョンに至らなかった無料トライアルユーザーに期間限定割引やトライアル延長を提供することで、リターゲティングすることもできます。さらに、リターゲティングは、新製品の発売、新しいコンテンツ、新しいイベントやウェビナーなどの最新情報を提供することで、現在のクライアントとの関係を育み、解約を防ぐことができる有効な戦略でもあります。
可能な限り自動化する
最後に、達成した成果を維持するために、可能な限り自動化することにより、時間管理を改善し、チームがコア製品に集中できるようにします。SaaS プラットフォームの場合、バックエンド機能を自動化することで、ビジネスの規模を拡大するときに必要になる追加の帯域幅を確保できます。自動化には万能のアプローチは存在しないので、始める前に顧客と自社にとって何が有効かを明確にしておく必要があります。マーケティングやソーシャルメディアへの投稿を自動化したり、営業メールを自動化してコンバージョンファネル内の見込み客の遷移を促進したり、アップセルとクロスセルを促進したりできます。自動化は、アカウント登録プロセスの一部としても機能します。ユーザーの進捗状況を追跡することで、ユーザーが行き詰まっている可能性のあるポイントを検出し、カスタマーサクセスチームに問題をエスカレーションするためのアクションプロンプトを自動で表示することができます。
SaaS ビジネスの規模を拡大する最も重要な方法の 1 つは、繰り返しの多い収益業務と財務業務を自動化することです。Stripe は SaaS 企業が、複数のサードパーティー製品が継ぎ合わされたシステムや、複雑でコストのかかる社内ソリューションに依存するのではなく、同じエコシステム内で収益報告、決済、請求を一元的に行えるようにしています。Stripe の Revenue Recognition は、ASC606 と IFRS15 への準拠を保証する自動化されたアプローチにより、企業が発生主義会計を容易に導入できるように支援します。Stripe Tax は、Stripe Billing や Payments に組み込まれており、Stripe のすべての取引の売上税徴収に伴う頭痛の種を自動的に解消します。最も大きな目標は、可能な限り多くのフロントエンドプロセスとバックエンドプロセスを合理化するソリューションを連結したスイートを使用して、SaaS ビジネスとプラットフォームを改良することです。これはビジネスの規模を拡大する準備として不可欠な要素です。
SaaS ビジネスの規模を拡大する準備はできたでしょうか。Stripe の活用方法について、エキスパートにご相談ください。
その他のリソース
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