事業者は月間経常収益 (MRR) をモニターして業績を把握し、戦略的な意思決定のためのインサイトを獲得します。MRR は、サブスクリプションビジネスにとって特に重要な指標です。以下では、MRR の概要、MRR の計算方法、異なる種類の MRR、および MRR の活用方法についてご説明します。また、サブスクリプション型ビジネスが、MRR を活用して成長の推進とビジネス戦略の最適化を実現する方法や、MRR データを使用して財務面の健全性を最大限に高めるためのヒントについても、詳しく見ていきます。
この記事の内容
- 月間経常収益 (MRR) の概要
- MRR の種類
- MRR の計算方法
- MRR がビジネスにとって重要な理由
- 他の主要指標との関係
- 顧客に関するインサイト
- 他の主要指標との関係
- MRR を伸ばす方法
- 価格戦略の最適化
- アップセルとクロスセル
- 顧客維持率の重視
- より多くの顧客の獲得
- 収益源の多様化
- 価格戦略の最適化
月間経常収益 (MRR) の概要
MRR とは、顧客から毎月発生する予測可能な定期収入を指します。これがサブスクリプション型企業にとって重要な指標であるのは、将来の収益を予測し、成長トレンドを見極め、戦略的意思決定を行うのに役立つためです。
MRR の種類
サブスクリプション型ビジネスは、以下のようなさまざまな種類の MRR を追跡することで、業績に対するインサイトを収集し、売上の増加についての理解を深め、改善が必要な領域を特定することができます。
新規 MRR (New MRR)
製品またはサービスに最近登録した新規のサブスクリプション利用者が生み出す MRR。顧客ベースで発生した伸びを表します。拡大 MRR (Expansion MRR)
サブスクリプションをアップグレードしたか、または別のサービスや機能を追加した既存のサブスクリプション利用者が生み出す MRR。顧客 1 人当たりの収益の伸びを表します。解約 MRR (Churn MRR)
顧客がサブスクリプションを解約したことによって失われた MRR。その月の顧客減少による収益の損失を表します。再有効化 MRR (Reactivation MRR)
過去にサブスクリプションを解約し、再び登録したサブスクリプション利用者からの MRR。顧客維持による収益の回復を表します。減益 MRR (Contraction MRR)
既存のサブスクリプション登録者がサブスクリプションをダウングレードした、またはサービスもしくは機能の利用登録を解除したことにより失われた MRR。顧客 1 人当たりの収益の損失を表します。純新規 MRR (Net New MRR)
新規 MRR と拡大 MRR の合計から、解約 MRR と減益 MRR を差し引いた MRR。月間経常収益の全体的な伸びを表します。
MRR の計算方法
MRR を計算するには、有料顧客の総数に、月次のユーザー 1 人当たりの平均収益額 (ARPU) を乗算します。たとえば、月当たり 100 ドルを支払う顧客が 100 人いる企業の場合、その企業の MRR は 1 万 ドルとなります。
MRR の計算式は次のとおりです。
MRR = (顧客数) x (顧客 1 人当たりの平均月次収益)
別の方法として、自社のビジネスが提供する各サブスクリプションプランまたは製品によって生み出された収益を合計することで、MRR を計算することもできます。
たとえば、ある事業者が 3 つのサブスクリプションプランを提供しているとします。料金はそれぞれ、プラン A は月額 10 ドル、プラン B は月額 20 ドル、プラン C は月額 30 ドルです。ある月において、各プランのサブスクリプション利用者数が、プラン A は 100 人、プラン B は 50 人、プラン C は 30 人だったとします。この場合、この事業者のその月の MRR は 2,900 ドルということになります。
MRR = (100 x $10) + (50 x $20) + (30 x $30) = $2,900
MRR の計算式は、追跡対象の MRR の種類に応じて異なります。
MRR がビジネスにとって重要な理由
MRR は、サブスクリプション型ビジネスモデルを採用している企業にとっては強力な指標です。MRR を活用することで、将来の収益を予測し、成長トレンドを見極め、問題領域を特定し、戦略的意思決定を行うことができるためです。たとえば、MRR の成長率が毎月 10% の安定した企業であれば、7 カ月ごとに収益の倍増が見込めます。このような情報は、雇用、製品開発、マーケティング戦略に関する意思決定に役立ちます。同様に、企業が MRR の減少を確認した場合は、顧客を失っていることを示している可能性があります。そのような企業は、この問題の原因を調査し修正することで、顧客維持率の改善を図ることができます。
以下では、MRR が持つメリットを事業者が最大限に活用するための方法をいくつかご紹介します。
他の主要指標との関係
MRR 単体でもビジネスの健全性について重要なインサイトを得ることができますが、他の指標と組み合わせることで、その価値が高まります。MRR は、顧客獲得コスト (CAC)、顧客生涯価値 (LTV)、売上総利益などの重要な指標の計算に利用できます。
CAC とは、新規顧客を獲得するためのコストで、営業とマーケティングの総コストを新規顧客数で割って算出します。LTV とは、ある顧客がその生涯にわたって企業にもたらすであろう予測収益で、ARPU に平均顧客寿命を乗じて算出します。売上総利益とは、売上高から売上原価を差し引いた後の利益で、MRR に売上総利益率を乗じて算出します。
顧客に関するインサイト
MRR は、さまざまな顧客セグメントの業績を追跡し、どのセグメントの収益性が最も高く、どこに販売およびマーケティング活動を集中させるべきかを特定する場合にも役立ちます。たとえば、大手企業、中小企業、個人の顧客に分けて MRR を測定することができます。
また、顧客の獲得と維持を測定、分析することで、顧客獲得活動を効率的に推進し成功させることができます。その一例として、各月の新規顧客獲得数と、その顧客がどこから来ているのかを追跡し、調査結果を営業やマーケティングの支出と比較することができます。また、MRR を活用して、顧客との取引継続期間や、顧客維持に貢献している要因を追跡することもできます。
MRR を伸ばす方法
MRR を伸ばす方法はいろいろあります。具体的には、価格戦略の最適化、アップセルとクロスセル、パフォーマンスの高い顧客の獲得・維持戦略の重視、収益源の多様化、Stripe が提供しているようなサブスクリプションの管理・請求ソリューションの導入などです。
価格戦略の最適化
これは、MRR を伸ばす最も効果的な方法の 1 つです。市場調査や A/B テストを実施することで、最適な価格戦略を決定できます。また、こうしたインサイトを活用して、ベーシック、スタンダード、プレミアムといったさまざまな料金プランを提供し、多様な顧客セグメントにアピールすることもできます。
アップセルとクロスセル
アップセルとは、より高額な製品・サービスを顧客に提案することであり、クロスセルとは、関連製品・サービスを顧客に提案することです。たとえば、ソフトウェアサービスの月額サブスクリプションを販売している企業であれば、顧客に対し、年間サブスクリプションへのアップセルを行ったり、追加のストレージ、高度なレポート・分析機能、他のソフトウェアとの連携といった機能やアドオンのクロスセルを行ったりすることできます。
顧客維持率の重視
顧客維持率は、経常収益ビジネスにとって主な優先事項の 1 つです。優れたカスタマーサービスと強力な顧客ロイヤルティプログラムを提供し、製品とサービスを継続的に改善すると、通常は顧客維持率が向上します。顧客の満足度を高い水準に保つと、解約率を引き下げ、MRR を伸ばすことができます。
より多くの顧客を獲得
顧客獲得は MRR にとって重要ですが、そのための戦略は、業界や過去の成功事例によって異なります。このような戦略としては、ターゲットを絞ったマーケティングキャンペーンによる顧客基板の拡大、新しい市場セグメントにアピールするための新たな製品・サービスパッケージの考案、自社のオンラインプレゼンスの見直しや、既存顧客に紹介インセンティブを提案して新規ビジネスへの引き込みを図ることなどが挙げられます。
収益源の多様化
収益源の多様化は、MRR を伸ばし、回復力を強化するための効果的な方法です。たとえば、現在 1 つの製品またはサービスのみから収益を得ている事業者は、提供の内容を拡充して、追加の製品やサービスを含めることができます。そうすることで、リスクを軽減し、より安定した収益源を確保できるようになります。
MRR を伸ばすための実証済みの方法について、詳細は Stripe のガイドをお読みください。
Stripe Billing を活用して、サブスクリプション型ビジネスの効率的な規模拡大、収益拡大の推進、および継続支払いと請求書発行に関連する業務の合理化を実現する方法については、Stripe Billingをご覧ください。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。